資料請求はこちら

       

HOME > 教員コラム > 創意工夫の結晶! 生薬製剤のレシピ

 

教員コラム

伊藤 哲朗|2020.10.15VIEW 4,338

創意工夫の結晶! 生薬製剤のレシピ

液体を用いて化学成分を取り出す「抽出」は、天然素材の生薬を利用する上で不可欠です。この操作は、お茶を入れる「熱湯抽出」のように私たちの豊かな食生活には欠かせません。抽出温度や液体の種類を変えるなど操作方法を工夫することで、抽出液中の栄養成分量を増加させ、風味や食感に変化を与えることもできます。

生薬には、薬効成分をはじめ多くの化学成分が含まれています。それらは水への溶けやすさや揮発性(香り成分)の有無などの多様な性質があるため、抽出法が変わると抽出液中の薬効成分も異なってきます。つまり生薬の抽出法にも、料理と同様にレシピが存在するのです。

医薬品の規格基準を示した「日本薬局方(局方)」では、「生薬関連製剤」を「生薬を原料とする製剤」と定めています。さらに抽出法の違いによりチンキ剤、流エキス剤、浸剤などに分類しています。ここではチンキ剤について、抽出法と製剤の特徴、代表的な処方薬を紹介します。まずは生薬を適切な容器に入れて、エタノールを加えます。密閉して成分が十分に溶けるまで室温で放置した後、ろ過などによって透明な液体をチンキ剤として取り出します。抽出液にエタノールを用いるので、水では抽出できない有効成分が含まれており、エタノールの殺菌性によって保存安定性に優れているのが特徴です。

一例をあげると、局方に定められているトウガラシチンキは、筋肉痛などの治療に使用する皮膚刺激薬として外用の液剤や軟膏に配合されているものです。その製法は有効成分であるカプサイシン(辛味成分)の抽出を目的としており、局方では製品中の同成分の含量が定められています。

このように生薬製剤のレシピは科学的知見に基づいて創意工夫されたもので、そこに目を向けると素材に含まれる化学成分の特徴が見えてくるのです。生薬製剤のレシピを化学の知識からひもとき、身近な薬用植物の利用に応用してみませんか。

 

 

執筆教員紹介

職位・学位:教授・博士(薬学)
氏名:伊藤 哲朗
専門分野:生薬学分野(生薬学・天然物化学)
担当科目:薬学入門、薬学基礎実習、薬用植物学、生薬学、
     生薬学実習、生薬学演習、天然物薬品化学、生薬学特論

 

こんな記事も読まれています