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物理系研究室
宇野 文二|2020.07.29VIEW 593
電気化学計測を基盤とした有機電子移動化学の研究
分析化学は現代薬学の発展を支える基盤技術である。薬学は分析化学的計測技術の上に成り立っているといっても過言ではない。本研究室では、電気化学計測技術、分光計測とその基礎となる量子化学計算や熱力学的解析法を駆使して、有機電子移動化学の解析やこれを利用した機能性分子の構築などの研究を行っている。また、これらの基礎研究の成果を利用した分析化学的応用研究として、生体成分、機能性素材、環境中の環境汚染物質の高感度精密分析法の開発を行なっている。さらに、臨床現場で効率的な治療成果をあげるために、治療成績を示すマーカー成分の同定とその高感度精密計測技術が求められている。このような現代薬学事情に対応した高感度・高精密計測の基礎研究と臨床化学的応用に資する分析法開発の研究を展開している。
最近の有機電子移動化学研究の一例として、「協奏的なプロトン-電子移動(Proton-coupled Electron Transfer:PCET)反応を基礎としたスーパーオキシドと共役型ポリフェノール類との相互作用に関する研究」を紹介する。ポリフェノール類は抗酸化作用を示し薬学的にも興味深い化合物であるが、その抗酸化作用に関わる酸化力やラジカル捕捉力は化学的には必ずしも大きくない。本研究では、ポリフェノールのスーパーオキサイド(活性酸素1種)消去能に対して、ポリフェノール類の2つのプロトン移動と電子移動が協奏的に起こる新規電子移動反応メカニズム(協奏的2PCETメカニズム)を提唱し、その機能発現に関わる構造活性を明らかにしてきた。また、PCET反応はDNAの酸化損傷をはじめとする生体関連の電子移動においても重要な役割を果たしていることを示している。さらに、分析化学的応用として、このメカニズムを利用して細胞内のスーパーオキサイドを視覚的に検出する蛍光プローブの開発を行っている。このように、分析化学的計測や量子化学的計算を基盤として有機電子移動化学の基礎研究から得られた知見をプローブ開発などの分析化学的応用研究に展開している。
(図の説明)2PCETメカニズムによるポリフェノール類のスーパーオキサイド消去メカニズム
物理系研究室
教授 宇野 文二
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