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物理系研究室

笹井 泰志|2020.07.17VIEW 2,560

医療を指向した機能性高分子の設計とそのバイオマテリアル開発への応用

医療応用を指向した機能性高分子の設計と開発研究

低分子化合物(モノマー)を重合して得られる高分子は、モノマー構造やモノマー間の結合様式により、様々な物理化学的特性や分解特性を持つものが設計可能です。また、高分子は分子量によって、その物理化学的性質が変化するため、特に、高度な安全が求められる医療応用を目的とした高分子の合成では、重合度の制御も重要な技術要素となります。

高分子はその設計バリエーションの広さから医療応用において大きな可能性を持つ素材です。私は、図に示すように、重合速度が制御可能な高分子合成技術を駆使したバイオマテリアルの設計と開発に取り組んでいます。

図①の効率的な薬物治療の実現を目的とした体内での薬の運び屋(ドラッグキャリア)の開発では、親水性高分子と疎水性高分子を繋ぎ合わせた両親媒性ブロック共重合体が水中での自己組織化により形成する直径数十nmの高分子ミセルを利用しています。特に、血管からがん組織に移行後、表面物性が変化したり、がん細胞表面の分子を特異的に認識することで、がん細胞への取り込みが促進される機能性ドラッグキャリアの設計とその有効性について検討しています。

また、図②は、血液等の生体成分と接触する医療機器材料表面の生体適合性改善法の開発です。体内に留置する必要がある医療機器材料においては、生体との親和性や表面修飾剤の剥離が課題であり、それらが原因と示唆される有害事象も報告されています。それら問題の解決を目的に、材料表面から、重合度を制御しつつ、機能性高分子を合成していくことで得られる厚さ数十nmの高密度のブラシ状高分子層による表面修飾法を開発し、現在、人工血管等への適用を検討しています。

 物質(薬)と生体との相互作用を扱う薬学は、上述の研究分野の実施にも大きなアドバンテージをもたらします。高分子の持つポテンシャルを見出し、また、それを有効利用することで各種疾病に対し安全で効率的な治療システムを開発することが目標です。

物理系研究室
教授 笹井 泰志

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