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医療薬学系研究室
田中 邦彦|2020.07.14VIEW 4,171
最強なるは白い悪魔か一角獣か。あるいは赤い彗星か。宇宙服
宇宙に出ると重力もありませんが,空気もありません。「高度真空」空間です。ですので宇宙空間で作業するには「宇宙服」を着る必要があります。
宇宙空間に飛び出すと、「皮膚が裂けて破裂する」、「血液が沸騰する」といった都市伝説が聞かれます。しかし実際には宇宙船から飛び出しても、皮膚は裂けません。それくらい我々の皮膚は強くできていますし、皮膚が裂けなければ血液も沸騰しません。じゃ宇宙服などいらないじゃないか。ヘルメットに空気だけ流しておけばいいじゃないか、ということになります。
しかし、ここで問題が生じます。地上では我々の体は,実感しませんが空気,大気圧によって押さえられています。押さえている力がなくなると当然膨らみます。皮膚は裂けませんが、その下にある毛細血管がちぎれます。
すると内出血します。全身青あざになります。押さえていた圧力がなくなると、血液に溶け込んでいた空気、特に窒素が溶けきれなくなって泡になります。ビールやコーラの缶を空けると、溶けていた炭酸ガスが溶け出してくるようなものです。これは沸騰ではありませんが、泡が肺に詰まって呼吸ができなくなります。これを「減圧症」といいます。結果的に命にかかわります。
というわけで、空気で加圧した宇宙服を着る必要があるわけですが、外は真空で,服の内側だけに空気があるので、風船のように膨らんでしまいます。非常に動きにくくなります。しかし圧を下げると減圧症になります。ではどうしたら安全でかつ、動きやすくなるか。人体の専門家として宇宙服を考え、作り、実験する日々です。
DNAから宇宙服まで。生命科学の全てを網羅する岐阜医療・薬。
岐阜医療式宇宙服Knight Suit® Ver. 1(左)とVer. 2(右)
医療薬学系研究室
教授 田中 邦彦
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