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医療薬学系研究室
稲垣 直樹|2020.07.17VIEW 531
アレルギー病態モデルの作成および解析と治療戦略の構築
アレルギーとは体内に侵入した異物を排除して自身を守る免疫のしくみが不利に働き、皮膚、呼吸器、消化器などに種々の症状をひき起こす疾患をいいます。多くの場合、食物、花粉、チリダニの成分などのように無毒の物質が原因 (アレルゲン) となります。気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などが代表的な疾患であり、日本では二人に一人が何らかのアレルギーに悩まされています。
アトピー性皮膚炎 (AD) は強い痒みを伴う慢性の皮膚疾患で、増悪と緩解とを繰り返します。多くの患者さんで血中 IgE 抗体レベルが上昇しており、アトピー素因が関わると推定されます。痒みは AD 患者さんを悩ませる最大の臨床症状であり、また、誘発される掻破が最も重要な増悪因子です。掻くことで痒みが増し、皮膚炎も悪化して痒みが誘発されやすくなるという悪循環が形成されます。痒みを抑え、痒みと掻破との悪循環を断ち切ることが患者さんの苦痛軽減、症状改善に役立ちます。AD の薬物治療の中心はステロイド外用剤で、炎症が鎮静化すると痒みも軽減しますが、ステロイドには直接痒みを抑制する効果は期待できないようです。
基礎研究において、疾病の治療戦略を構築するためには病態モデルを確立することが有用です。ヒトの病態に類似する実験動物のモデルを確立することができれば、ヒトに外挿できる情報が得られる可能性があり、ヒトの病態の解明につながります。また、病態モデルを用いることにより、新しい薬物の探索や評価、治療手法の確立にも有用です。
NC/Nga マウスは AD 類似の病態を誘発するのに適していると考えられ、コナヒョウヒダニ (チリダニの一種) の培地から調製した抗原 (アレルゲン) 溶液を耳殻に反復暴露して誘発する皮膚炎モデルを確立しました。耳殻の強い腫脹とともに抗原暴露後には高頻度の掻破行動が観察されます。これらのマウス皮膚炎モデルを用い、病態の解析と治療戦略の構築を進めたいと考えています。
頸背部皮膚に皮膚炎を誘発した HR-1 (hairless) マウス。後肢で炎症部位を掻破している
医療薬学系研究室
教授 稲垣 直樹
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