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化学系研究室

小縣 綾|2020.07.31VIEW 736

神経炎症イメージングリガンドの開発


アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患において、アミロイドβやタウ、αシヌク レインなどのタンパクの異常凝集・蓄積は、不可逆的な神経障害を惹き起こす。神経変性疾患の治療は、アルツハイマー病におけるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体阻害薬、 パーキンソン病におけるドーパミン作動薬剤のように対症療法が中心であり、根本治療薬の開発には至っていない。一方で、アルツハイマー病の特徴的病理である老人斑(アミロイドβ)や神経原線維(タウ)変化周囲には、アストロサイトやミクログリアの浸潤が認められ、神経炎症が神経障害に関わると考えられている。しかし、神経炎症には異常蓄積タンパクを除去する神経保護的役割と神経障害をきたす二面性があり、単純に炎症を抑える薬剤では疾患の進行を抑えることに成功していない。   

ポジトロン断層撮影 (PET) は11Cや18Fのようなポジトロン放出核種で標識した薬物を生体内に投与し、標識薬物の生体内における動態を明らかにする方法である。標識薬物の生体内における動態を解析することで、ヒト生体内における特定の分子の分布や密度を低侵襲で評価できるため、創薬におけるバイオマーカーとして幅広く用いられている。従って、 神経炎症を標的とした創薬において、これら機能に関わる分子が患者生体内で観察できるバイオマーカーとして評価可能になれば、治療法開発効率の飛躍的な向上が見込める。
 そのため、脳内においてミクログリアやアストロサイトに発現し、神経変性疾患において神経炎症に関わる標的タンパクを可視化するPETイメージングリガンドを開発し、神経変性疾患における治療法の開発に役立てることを目的に研究を進めている。

化学系研究室
助教 小縣 綾

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