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化学系研究室

萬代 大樹|2020.07.31VIEW 1,690

有機分子触媒の開発

私の専門は、有機合成化学という研究領域ですが、その中でも特に反応開発に興味をもって研究を進めてきました。反応開発とは、目的とする分子変換反応を効率的に進行させる触媒を開発し、既存の方法よりも目的化合物の収率やエナンチオ選択性を大幅に改善するような高性能な触媒を開発したり、これまで何工程もかかって合成していた化合物をわずか数工程に短縮できる新しい方法論を見つけたりすることを目的としています。またこれまでに報告例のない全く新しい反応を見つけ出すことも反応開発の醍醐味です。

N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)は,アルコールのアシル化反応を劇的に促進させる求核触媒として、合成反応によく利用される求核触媒の1つです。しかしこれまで報告されている光学活性DMAP誘導体合成は工程数が多く,構造多様性に富んだDMAP誘導体を迅速に合成することは不可能でした。またDMAPに不斉環境を組み込むと,その不斉源と反応基質(求核剤)との立体反発により,触媒活性が著しく低下することが知られています。

このような背景のもと,我々の研究グループ独自の触媒設計コンセプトに基づいた新しい光学活性DMAP誘導体の開発に成功しました(萬代ら、Nature Communications 2016)。この触媒をわずかな量(0.05 mol %)用いると、オキシインドール類の不斉Steglich反応とよばれる分子変換反応をわずか反応時間5時間以内で進行し,不斉四級炭素をもつ生成物を高いエナンチオ選択性で合成することができます。また様々なアルコールのエナンチオ選択的アシル化などにも利用できる汎用性の高い触媒です。現在、この触媒は市販されており、今後は医薬品や農薬などのファインケミカルの分野で応用研究が進展する事が期待されます。

化学系研究室
准教授 萬代 大樹

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