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化学系研究室

野下 俊朗|2020.07.31VIEW 1,079

生物活性物質の合成研究 

人間をはじめとする動物や植物、微生物といった生物の体内には数多くの有機化合物(天然物)が含まれていますが、その中には様々な生理現象に対して特有の作用を示す生物活性物質が存在します。これら生物活性物質には応用することが可能ならば人類の生活に大きな利益を与えるだろうと予測される化合物もたくさんあります。しかし、天然から得られる生物活性物質の量は通常極めて少量です。そこで、容易に入手できる簡単な化合物を原料に化学合成し、大量供給することが必要不可欠となります。生物活性物質の化学合成は応用研究の入り口としてとても重要です。そこで私の研究では有機合成化学の手法を用いて、簡単な構造の化合物から複雑な構造の生物活性天然有機化合物を全合成する研究などを行っています。得られた化合物を用いることでその生物活性を明らかにしていくとともに物質の活性発現の仕組みや化学構造と生物活性の相関関係の解明、医薬・農薬への応用を目指した研究も実施します。これらの研究を通して生命の仕組みの解明や天然物以上に有用な化合物を作り出していけたら、と考えています。最後に最近の研究の一例として「特異な構造のジアリールヘキサノイドの合成」を紹介します(図)。

 東南アジアで栽培される嗜好品の原料植物「キンマ」から単離された化合物は、強い抗酸化活性と抗菌活性を持つと報告されていました。そしてこの化合物の構造は天然には非常に稀なジアリールヘキサノイド構造と推定されていました。私たちのグループはこの化合物の特異な構造に興味を持ち合成研究を行いました。しかし、合成によって得られた化合物の機器分析データと報告されていた天然物のデータとは全く一致しませんでした。そこで全く異なる経路での合成を行なうなどして検討した結果、私たちの合成に誤りはなく、天然物の推定構造が誤りであり、構造の再検討が求められるべきであることを明らかにしました。

化学系研究室
教授 野下 俊朗

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