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化学系研究室

深谷 匡|2020.07.31VIEW 1,976

植物が生成する二次代謝産物を用いた抗腫瘍薬の開発

がん患者数は年々増加しており、2030年には世界中で2000万人を超えると推測されています。加えて、がん治療に対して臨床で使用されているタキサン系、ビンカアルカロイド、カンプトテシンなどの抗腫瘍薬は長い期間使用を続けることで、抵抗性を獲得してしまうことが現在大きな問題となっており、薬剤抵抗性を持つがん細胞に対する抗腫瘍薬の開発が急務となっています。その薬剤耐性獲得メカニズムは、P-糖タンパク質の過剰発現や特定の遺伝子の変異の関与などがあげられ、創薬のターゲットとして注目されています。

生薬学分野では、植物が作り出す二次代謝産物と呼ばれる化合物から、抗腫瘍薬やその種となる化合物 (医薬品シーズ) の開発を目指して研究を行っています。すなわち、植物素材を、有機溶媒を使って抽出し、オープンカラムクロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーといった様々な手法を駆使してひとつひとつ綺麗な状態にしてから、質量分析装置や核磁気共鳴装置を用いて化学構造を決定します。中には、今まで誰も報告したことのない新規化合物が得られることもあり、珍しい骨格の化合物の構造を決めることができたときは何とも言えない喜びがあります。さらに、得られた化合物については、薬剤感受性および抵抗性の腫瘍細胞に投与して細胞増殖の抑制作用の様子を評価し、類似の化合物と活性の強弱を比較して構造活性相関を検討します。

また、私はこれまでに、ドイツのマインツ大学で腫瘍細胞を用いた腫瘍細胞増殖抑制作用メカニズム研究や、アメリカのワシントン州立大学で植物の二次代謝産物の網羅的解析など幅広い研究を行ってきました。今は研究室を立ち上げたばかりで、すべてが手探りの状態ですが、本学では新しい分析機器や測定機器が充実しているため、今後は留学で学んだ知識・手法やアイデアを融合させ新しい研究に活かしたいと考えています。

化学系研究室
助教 深谷 匡

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