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教員コラム

笹井 泰志|2020.10.16VIEW 5,955

良薬も苦くない方がいい ~くすりを飲みやすくする苦味マスキング技術~


「良薬口に苦し」という諺があります。これは“よく効く薬が苦い”というのが前提になっていますが、効くか効かないかにかかわらず、実際、薬に含まれる有効成分の多くは苦い!病気やけがで苦しいのに、さらに苦い薬は勘弁してほしい…誰もがそう思うことでしょう。
また、小さな子どもに必要なとき、きちんと薬を飲ませるためにも、薬の味は医薬品開発において重要な課題の一つです。

 このように薬の服用時の苦味を消したり、軽減させる技術を「苦味マスキング」といいます。言葉の通り“苦味にマスク”をするのです。味覚は口の中の特有の感覚なので、ゴクンと飲み込んだ後に苦い有効成分が溶け出すようにすれば、味を感じることなく効果が期待できます。有効成分をカプセルに入れたり錠剤や顆粒(小さな粒状の医薬品)の表面にコーティングする方法は、代表的な苦味マスキング技術です。例えば古くからある薬に、お腹が痛いときに使われる正露丸という胃腸薬があります。この正露丸、独特の強い味と匂いが特徴ですが(※ファンも多い)、糖衣錠というものもあることはご存じでしょうか。字のごとく、糖の衣を着せた錠剤、すなわち正露丸を砂糖でコーティングしたもので、これにより匂いや味を気にせず飲むことができます。

 また、腸で薬を溶かすためのコーティングなど、他の目的で施された技術が結果として苦味マスキングとして機能しているケースや、有効成分以外に含まれる添加剤の効果で、苦味が打ち消されている場合もあります。そう考えると実に多くの薬の苦味はマスクされていると思ってよいでしょう。

 なお、苦味マスキングが施された薬は、飲みにくいからといって自分の判断で錠剤を小さく割ったり、カプセル剤の中身を出すと、その効果も失われてしまいます。また、飲み込んだ後はきちんと有効成分が溶け出すように、例えば多めの水で飲むなど飲み方に指示がある場合は、それに従うことが大切です。

執筆教員紹介

職位・学位:教授・博士(薬学)
氏名:笹井 泰志
専門分野:物理化学分野(薬物キャリア・バイオマテリアル・高分子化学)
担当科目:物理学、物理化学Ⅰ・Ⅱ、物理系実習、物理系薬学演習、製剤学Ⅰ・Ⅱ、総合薬学特論Ⅰ・Ⅲ・Ⅴ、特別研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ

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