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教員コラム

世戸 孝樹|2020.07.17VIEW 13,162

薬の用法・用量はなぜ決まっているの?

薬の用法・用量はなぜ決まっているの?

物質がヒトの体にとって「良いもの」となるか「悪いもの」となるか。それは体の中に入る物質の量が重要です。例えば糖分は体を動かすエネルギーとして欠かせませんが、摂りすぎると糖尿病や肥満などの病気を引き起こします。薬も同じで、適切な量を服用すれば病気を治す「効果」を示す反面、過剰に服用すると不調に繋がる「副作用」を引き起こす可能性が高くなるのです。そこで薬の「効果」を最大限に発揮させ、「副作用」を最小限に抑えるために「用法・用量」が定められています。

薬の「用法・用量」は、細胞や動物を用いた実験をもとにシミュレーションを行い、ヒトによる治験を実施して効果・安全性・薬物動態(体内での薬の動き)などを確認した上で決められています。つまり1 回に服用する量を自己判断で増やせば「副作用」を生じる可能性があり、飲み忘れても2 回分を1度に飲んではいけないのです。また薬を服用するタイミングも重要。例えば食事の影響を受けて体の中に入る量が少なくなる薬は食事の前 (食前) に、食事の影響を受けて効率よく体の中に入る薬や空腹だと胃を荒らす薬は食事の後 (食後) に服用します。薬局でもらう薬の多くは食後に服用するよう設計されており、食事のタイミングに合わせることで飲み忘れの防止にも一役買っています。加えて、複数の薬の服用や食品中の成分にも注意が必要。多くの薬は肝臓で代謝酵素というタンパク質により分解されて体から出ていきます。しかし同時期に使った別の薬や食品成分が代謝酵素の働きを邪魔して薬がうまく分解されないと、体の中に溜まって危険な「副作用」に繋がる恐れがあります。

このように「用法・用量」の決定には効果や安全性、薬物動態が深く関わっており、薬理学や薬物動態学、製剤学といった様々な薬学の専門科目を学ぶ必要があります。薬剤師はこれらの知識を活かし、より良い薬の使い方を説明できる医療の担い手として活躍しています。

執筆教員紹介

職位・学位:准教授・博士(医療薬学)
氏名:世戸 孝樹
専門分野:薬物動態学(生物薬剤・動態制御・医薬品安全性)
担当科目:薬物動態学Ⅰ、薬物動態学Ⅱ、薬物動態学実習、薬物動態学演習、総合薬学特論、総合薬学特論Ⅲ、総合薬学特論Ⅴ

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