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医療薬学系研究室

高 鑫坤|2020.07.31VIEW 698

ガン患者の症状緩和に及ぼす漢方補剤の段階的な応用に関する研究

ガンに対する手術、放射線、抗癌剤という西洋医学の三大治療法は、それぞれの治療技術を的確に使い分け、或は併用によってより完璧な治療が期待できる。しかし、癌患者は癌そのもの、及び癌の治療によって引き起こされた、様々な全身症状及び個別症状を呈し、その結果、患者の気力と体力は失われ、生体防御能、即ち病気と闘う力は低下し、結局、多くの患者に、すべての治療が無効になる時が訪れる。これはガンの特徴である。

漢方は、西洋医学の不足の部分を補う力があり、コンプリメンタリー、即ち補完する医学であると位置づけられ、西洋医学と漢方のそれぞれがうまく守備できる範囲を見極めれば、癌及び癌治療に伴う様々な症状の改善、患者のQOLの向上、ひいては延命につながることができると考えられる。

本研究は、癌患者の漢方治療に当たって、西洋医学的に有効な治療を積極的に用いた上で、病気のステージ及び病態による全身倦怠感、食欲不振、体重減少、便通異常、夜間頻尿、不眠不安などの全身症状のほか、抗癌薬や放射線治療の副作用による多彩な症状に対し、段階的に益気、健脾、補腎、活血の「漢方補剤」を用いて検討する。

第1段階は、癌と告知された患者が、不安や抑うつを呈した状態であり、所謂“気虚”、“血虚”に最も基本方剤の「四君子湯」か「四物湯」を用いる。

第2段階は、癌が進行し、また侵襲的な治療によって気力と体力が低下した状態であり、「補中益気湯」か「十全大補湯」を用いる。

第3段階は、さらに病状が進み、少し動いただけでも息切れし、咳や痰を伴うような状態であり、「人参養栄湯」及び「六君子湯」を用いる。

そして最後の第4段階は、全身が衰弱し、動悸、下痢、手足の冷えなどがみられる状態であり、厳密な意味での補剤ではないが、体力の極端に低下した患者を元気にする、煎じ薬の「茯苓四逆湯」か「人参湯」を用いる。

医療薬学系研究室
准教授 高 鑫坤

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