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生物系研究室

金子 葉子|2020.07.31VIEW 623

超高齢化社会において薬剤師としてできること

薬学部では薬剤師になるための勉強をするのはもちろんですが、治療薬の開発につながる基礎研究も行っています。私は、超高齢化社会で罹患者数が増加している病気について研究をしています。その一つが肥満に関する研究です。肥満自体は病気ではありませんが、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の要因であり、動脈硬化、心筋梗塞といった突然死につながる疾病の原因になると考えられています。

摂食行動は、図に示すように視床下部を中心とした神経ネットワークによって制御されています。

近年の研究により、肥満者の視床下部において慢性の炎症が生じていることが明らかになりました。さらにマウスを高脂肪食で飼育すると、脳内の炎症反応に関与しているミクログリアという細胞の活性化が起こることが報告されました。これらの報告をもとに、食事中の脂肪によってミクログリアが活性化されることで視床下部に炎症が生じ、それによって神経ネットワークが攪乱されて摂食行動が適切に制御されないのではないかという仮説を立てて研究を進めています。

ミクログリアが活性化すると 炎症性サイトカインであるTNF-aを分泌します。TNF-aが過剰に分泌されると炎症反応が起きます。そこで、TNF-aに対する受容体を欠損したマウス(炎症反応が起きない)と正常なマウスに高脂肪食を投与して8週間飼育しました。

写真はTNF-a受容体が正常なマウスです。高脂肪食を与えることにより、通常食を与えたマウスの約2.5倍体重が増加しました。一方、TNF-a受容体が欠損したマウスでは、体重増加は1.8倍程度でした。今後、様々な解析を行い、

視床下部におけるミクログリアの活性化、炎症と神経細胞の関係を解明します。さらに、傷害された神経細胞の代わりに、ES細胞を視床下部神経細胞に分化させたものを移植して、高脂肪食投与による肥満に影響を及ぼすかどうか検討します。一連の実験により、視床下部の炎症反応と肥満の関連性を解明し、視床下部性肥満の治療法につなげたいと考えています。

生物系研究室
教授 金子 葉子

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