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生物系研究室
岩城 壮一郎|2020.08.01VIEW 788
血中を循環するmiRNAを指標とした、動脈硬化評価システムの開発
我々は、動脈硬化発症初期に特異的なバイオマーカーとして、血中を循環するmicroRNA (miRNA)に着目し、動脈硬化の早期発見法の確立ならびに患者個々の症状にあわせたオーダーメイド医療への応用を目指しています。
動脈硬化の発症は血管内皮機能の障害により始まります。この段階では薬物療法や補充療法、生活習慣改善などにより症状の改善が可能ですが、症状が進展すると平滑筋の増殖やプラーク形成、石灰化へと至り治療抵抗性となるため、より早期の診断と治療開始が必要です (図1)。しかしながら、動脈硬化は遺伝的素因に対して種々の環境因子が複雑に関与するため、それぞれの危険因子の寄与度や治療に対する応答は患者により異なります。そのため、個々の患者の症状を正確に評価する方法の開発が必要とされています。
低分子ノンコーディングRNAの一種であるmiRNAは、標的の遺伝子やタンパク質の発現を微調整することで発生や形態形成、アポトーシス、細胞増殖、生殖機能等の様々な生物学的機能に関与しています。近年、エクソソームのような小胞顆粒に包埋されて体内を循環する、分泌型miRNAが大きな注目を集めています。分泌型miRNAは、がんをはじめとした疾患の病態や進行度合いなどの生理状態によってその発現量や種類が大きく変動することが知られ、血液を利用した低侵襲性の診断用バイオマーカーとして期待されています。
我々は、名古屋市立大学病院心臓・腎高血圧内科の外来を受診した、古典的な心血管危険因子 (高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙) を有する無症候かつ無治療の患者における分泌型miRNAの発現を検討し、特定のmiRNAの発現が有意に変動することを見い出しました (Sun, Iwaki et al. Thrombosis J, 2012)。現在我々は、分泌型miRNAを利用した動脈硬化の新しい評価法の開発や診断キットへの応用に展開するための基盤となる研究を行っています。
生物系研究室
准教授 岩城 壮一郎
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