教員コラム
伊藤 哲朗|2020.07.17VIEW 1,511
天然素材利用のプロを目指す!
地球上には無数の天然素材が存在します。ヒトは病気や飢餓との長きにわたる闘いを通して、体に受け入れられる素材を薬物や食物として利用し、受け継いできました。その中で生薬はヒトが最初に使った医薬品で、動植物の薬用部位に簡単な加工を施したものです。
食卓になじみ深い生薬は数多く、例えば健胃に働きかける生姜(ショウキョウ)は料理に欠かせない農作物です。薬学とは農学のセカンドステージ、つまり天然素材を健康のために創意し利用する学びといえます。
漢方は中国を起源とする伝統医学が日本で独自に発展した医学です。漢方では「生薬」を組み合わせた「漢方薬」を使用することで、ヒトの疾病治療や健康増進に寄与してきました。現代の医療現場においても漢方薬の利用は欠かせないものであり、新型インフルエンザに対する効果や抗がん剤の副作用軽減作用が注目されるなど、様々な臨床応用方法が見出されています。漢方薬の魅力は、多くの成分を含む生薬の組み合わせによる1つの漢方薬で複数の症状に対応できるという点にあります。また、漢方にはヒトの生理機能を高めることができる処方が存在します。これらの特性を活かした治療は、多剤併用による医療費の高騰問題を抱える現代社会に対して、大きな福音と成り得ます。高齢化社会において「未病(まだ発生していない病)の予防」の必要性が叫ばれる今、漢方は健康寿命の延伸というヒト共通の願いに答えるものと期待されています。
2011年に行われた日本漢方生薬製剤協会の調査によると、漢方薬を使用する医師は約90%。今日も漢方薬は日常診療で広く使用されているため、私たち薬剤師は薬のプロとしての高度な知識が要求されています。
薬学部では医療への薬物利用の原点「天然素材・生薬」を最初に学び、有機化学や薬理学といった細分化された学問をあわせて習得することで知識を深めていきます。
執筆教員紹介
職位・学位:教授・博士(薬学)
氏名:伊藤 哲朗
専門分野:生薬学分野(生薬学・天然物化学)
担当科目:薬学入門、薬学基礎実習、薬用植物学、生薬学、生薬学実習、生薬学演習、天然物薬品化学、生薬学特論
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