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教員コラム

稲垣 直樹|2020.10.16VIEW 1,158

アナフィラキシーショックって危険なの?


2012年12月、食物アレルギーによるアナフィラキシーが原因とみられる事故で東京都内の小学校に通う子供さんが亡くなりました。食物アレルギーを防止する対策は講じられていましたが、わずかな行き違いがあったようです。この事故を受け、日本ではアナフィラキシーのガイドラインが作られました(日本アレルギー学会、2014 年)。

では、アナフィラキシーとは何でしょうか? ガイドラインでは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。また、アナフィラキシーショックは「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」のこと。直ちに循環と呼吸を確保しないと命が失われる危険な状態を指します。

日本では2001年以降の13年間で、年間50~70名、合計768名がアナフィラキシーショックにより亡くなっています。原因別では、医薬品が323名、ハチ刺傷が266名、食物が40名。このようなアナフィラキシーショックの原因となる物質(抗原)はアレルゲンと呼ばれます。例えばハチに刺された場合は、ホスホリパーゼ A やヒアルロニダーゼなどの酵素などが、パンを食べたときに発症したら小麦に含まれるグリアジン、グルテニンなどがアレルゲンとして考えられます。

アレルゲンの種類や侵入経路が異なったとしても、症状の多くは全身の臓器や皮膚、粘膜にアレルギー症状として出現します。症状の進行の速さや重症度を予測することが難しく、数分で死に至る場合もあるため速やかな対処が必要です。アナフィラキシーが疑われるとき、真っ先に投与するべき治療薬はアドレナリン。

医療機関で処置を受けるまでの応急処置としても効果があるため、アナフィラキシーにかかったことのある患者さんはアドレナリン自己注射製剤であるエピペンを携帯していると安心です。予防することができれば患者さんはさらに安心して生活を送れますが、残念ながら現時点でアナフィラキシーを未然に防ぐ薬は知られていません。アレルゲンを確実に回避することがもっとも重要だと言えるでしょう。

薬学は医薬品を新たに作り出すことから、医薬品使用、使用後の評価にまで、幅広くかかわる学問分野です。薬学で学んだことを元にアナフィラキシーを予防する薬の開発にチャレンジしていくことも、薬学生に期待したいと思います。

執筆教員紹介

職位・学位:教授・薬学博士
氏名:稲垣 直樹
専門分野:薬理学分野(免疫薬理学・アレルギー学)
担当科目:薬理学Ⅰ-Ⅲ、薬理系実習、薬理系薬学演習

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