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教員コラム
濱武 通子|2020.07.17VIEW 456
なぜ、既存の薬を他の症例に使えないの?
医薬品の開発には、候補物質を探す基礎研究にはじまり、薬物の有効性や安全性を確かめるため、動物や細胞を用いて行う非臨床試験や、人を対象とした臨床試験を行う必要があります。
医薬品としての有効性・安全性・品質が証明された後、企業は厚生労働省に対して承認申請を行い、医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査を経て、厚生労働大臣が承認します。
こうして新しい医薬品が誕生するまでには約10年以上もの年月と数百億円の費用がかかると言われています。
それでは、既存薬を承認申請した内容と異なる疾患に使用することはできるのでしょうか。
この場合、効果が強く出るかもしれないし、全く効かないかもしれません。逆に、副作用により健康被害が起こる危険性があります。このため、既存薬であっても異なる疾患に使用するためには、
改めてその疾患に対する有効性や安全性について確認した後、承認を受ける必要があるのです。
一方、科学的根拠に基づいて医学薬学上公知であると認められている場合には、臨床試験の
全部または一部を改めて実施する必要はなく、効能または効果などの承認が可能となる公知申請制度(特例承認)などもあります。新型コロナ感染症のパンデミックのような緊急事態において、
これらの手続きが簡略化され、特例承認された「レムデシビル」は2010年の新型インフルエンザに対するワクチン以来のことになります。
医薬品が私たちの手に届くまでには、多くの時間と費用と手間がかかり、多くの人々が関わっています。医薬品が製造され、販売されるまでを統括して管理する統括管理者は法律で「薬剤師」であることが定められています。
このように、薬事行政は、国民の健康を守るため、医薬品医療機器等法の適切な運用と実施を担っているのです。薬剤師は薬の専門家として、薬事行政においても広く活躍しています。
執筆教員紹介
職位・学位:准教授・博士(薬学)
氏名:濱武 通子
専門分野:衛生化学、公衆衛生学分野
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