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薬学臨床系研究室

谷澤 克弥|2020.07.17VIEW 524

抗がん薬の副作用と支持療法に関する研究

厚労省資料によると、2018年のわが国の年間死亡者数は約136万人です。死因別では、がんが全体の27.4%を占めて最も多く、日本人の約3.6人に1人が、がんで亡くなっています。新しい抗がん薬が次々と開発されていますが、近年話題の免疫チェックポイント阻害剤も含め、がんを制圧するほど有効な治療薬はまだ登場していません。したがって、がんに罹患した患者さんは治療を受けながら、がんとともに生きる時代がしばらく続きそうです。一方、がんの治療薬は吐き気、白血球減少、下痢、アレルギー反応など様々な副作用を起こす場合が多く、患者さんを苦しめるこのような副作用を軽減することは大切です。

私はこれまで多数の抗がん薬治療のデータを集積して、副作用の発現傾向と支持療法(副作用を予防する治療)の有効性について研究を行ってきました。その結果の一つを次に示します。

シスプラチン治療後の腎障害発現リスク要因の解析

胃がん、肺がんなどの治療に繁用されるシスプラチンは腎障害の副作用が起きやすい抗がん薬です。シスプラチン治療が行われた111名の患者さんの年齢、性別などの基本情報(要因)と検査値データを集め、統計処理により腎障害発現のリスク要因を解析しました。その結果、①治療開始前の血清クレアチニン値が正常上限値の85.5%以上、②シスプラチンの1回投与量が60mg/m2以上、③治療時に負荷される輸液中の総Na+量が370mEq未満、の3つが有意なリスク要因として見出されました。

この結果を臨床に適用すると、①および②の条件に当てはまる患者さんの治療時は、腎障害のモニタリングを普段より頻回に行うことになります。また③は全てのシスプラチン治療を行う場合に、370mEq(生理食塩水として2.4L)以上のNa+を含む輸液投与を推奨するということです。

今後も、抗がん薬治療を受ける患者さんの副作用を軽減することを目標に、この研究を続けたいと考えます。

臨床薬学研究室
准教授 谷澤 克弥

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