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教員コラム

森 博美|2020.11.17VIEW 2,511

「お薬手帳」はなぜ持っていたほうがいいの?


薬局で薬を調剤してもらう際、ほぼ必ず「お薬手帳はありますか?」と尋ねられるはずです。いつ・どこで・どんな薬が処方されたかを記録しておくものですが、その重要性は誕生の背景から理解することができます。
 お薬手帳が導入されたのは1993年、国内の患者15名が別々の病院から処方された薬の併用によって死亡した「ソリブジン薬害事件」がきっかけとなっています。また1995年に起きた「阪神・淡路大震災」では、お薬手帳があれば処方箋なしで薬を受け取れたケースがあり、災害における重要性が認識されて急速に普及するようになりました。
 こうしたことから、お薬手帳の意義は薬歴の記録だけではないことが分かります。患者が複数の医療機関を受診してそれぞれから処方された時、薬剤師は「同効薬の重複がないか」「良くない飲み合わせはないか」等の薬の相互作用をチェックします。そうすれば、薬の過剰摂取や効果の減少、副作用の発現といったトラブルを未然に防ぐことができるのです。また、旅行先での受診や救急受診時、災害で避難した場合等においても、服用薬の名前から薬剤アレルギー歴までを速やかに、そして正確に病院や医療スタッフに知らせることができます。


お薬手帳を持つことは、患者の金銭面でのメリットもあります。それは、薬局にお薬手帳を持参すると支払いが少し安くなること。原則3ヵ月以内に同じ薬局(かかりつけ薬局)で薬を調剤してもらった場合に限る等条件はあるものの、持参しない方と比べて自己負担金に差が生じるのです。また、スマートフォンにダウンロードして活用できる「電子お薬手帳」も次々に登場。普及段階のため全ての薬局で対応しているわけではありませんが、通院時に限らず常に携帯できるよう便利になってきています。
このように、医師・薬剤師と患者をつなぐお薬手帳は、患者を健康被害から守り、災害時の命綱にもなります。そのため、お薬手帳を一人1冊作って管理することを推奨しているのです。

 

執筆教員紹介

職位:教授
氏名:森 博美
専門分野:臨床薬学分野(調剤学、病院薬学、薬局薬学)
担当科目:薬学概論 実務実習 医薬品副作用学など

 

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