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教員コラム

|2021.11.19VIEW 171

巧妙化するドーピングを見逃さない!アスリートバイオロジカルパスポートとは?


ロシアの組織的なドーピング問題が暗い影を落とした2016年のリオデジャネイロ五輪に続く東京五輪では、ドーピングのないクリーンな大会が期待されていました。
しかし、東京五輪でも女子陸上短距離選手と男子トライアスロン選手がドーピング検査で陽性反応を示したため失格処分になりました。
女子選手からは成長ホルモンとエリスロポエチン(EPO)が、男子選手からはEPOが検出されました。

成長ホルモンとEPOは、私たちの体内で働く重要なホルモンです。
そのためこれらのホルモン分泌が減少して病気になってしまった患者に対する治療薬として、遺伝子工学技術を用いて産生された医薬品が開発されました。
成長ホルモンは低身長症治療薬、EPOは腎性貧血治療薬として使用されています。

アスリートにとっては、成長ホルモンの筋肉増強作用やEPOの赤血球増加作用は肉体改造につながります。
特にEPOを使ったドーピングは、酸素運搬能力が高まり結果的に持久力が向上するので、この医薬品が販売された1990年代に入ってスポーツ界で広まりました。
ツール・ド・フランスを7連覇した有名な自転車選手はEPOを使用していたとしてアンチドーピング機構から永久追放の処分を科されました。

成長ホルモンやEPOがアスリートのドーピングに使われる理由として、これらが非常に検知しにくいというのがあります。
体内にある天然型と区別がつきにくいのと同時に、投与後すぐに分解してしまうためドーピングをした痕跡が残りにくいのです。

一方、ドーピング検査技術は日進月歩で発展しており、検査機関ではこれまでの医薬研究で培った最新の分析法が導入され禁止薬物を特定しています。
また、遺伝子ドーピングなどの巧妙化するドーピングに対抗するために、アスリートの血液や尿などの成分を継続的に検査するアスリートバイオロジカルパスポート(ABP)を実施し、限度を超える大きな変化があれば体内に禁止薬物があることを科学的に判断することも可能となっています。

ドーピングに不正使用されている薬物や方法の多くが薬学研究の成果を悪用したものです。
薬学に携わる者が、アスリートに医薬品の適正使用法、倫理的問題、健康リスクについての発信を積極的に進めていくことで、ドーピングが全くないクリーンなスポーツ大会の実現に近づくのではと思います。

執筆教員紹介

職位・学位:教授・博士(薬学)
氏名:松原 守
専門分野:生化学・分子細胞生物学分野(蛋白質科学、医薬品開発、細胞生物学、機能性食品開発)
担当科目:生化学Ⅰ、分子生物学、細胞生物学、薬学基礎実習、生物系実習、生物系薬学演習、特別研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ、総合薬学特論Ⅰ・Ⅴ)

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